Mac Miller(マック・ミラー)の音楽キャリアと死因の薬物中毒について

2018年にアルバム「Swimming」をリリースした1か月後に26歳で命を落としたラッパー「マック・ミラー」。その生涯を、アルバムと合わせて紹介します。

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今回はラッパー「マック・ミラー」についてです。

マック・ミラー(Mac Miller)とは

Photo by Nicolas Völcker / CC BY-SA 4.0

マック・ミラーは1992年生まれのアメリカのヒップホップミュージシャン。主にラッパーとして知られていますが、自身で楽曲を製作したり(トラックメイキング)、そのために楽器も演奏するなどマルチに活動していました。


18歳の時にリリースしたミックステープ「K.I.D.S」で一定の人気を獲得するなど、若くして音楽的商業的成功を掴みますが、その音楽キャリアには常にドラッグが付きまとうことに。

2018年に5枚目のアルバムをリリースした後、オーバードース(ドラッグの過剰摂取)により26歳の若さで亡くなります。


そんな彼の音楽キャリアと麻薬依存について見ていきましょう。

マルコム少年からラッパー「マック・ミラー」に

▲ マック・ミラーのインスタグラムより

1992年にピッツバーグで生誕

マック・ミラー、本名Malcolm James McCormick、は1992年にアメリカ・ペンシルバニア州のピッツバーグで生まれました。

音楽への目覚め

基本的には独学で、ピアノ、ギター、ドラム、ベースの演奏を6歳頃から開始します。

さすがに6歳の子供が突然それらの楽器に興味を持つことはないと思うので、おそらく親が音楽をよく聞いていたり、教会で聖歌隊の合唱を目にしたり(母親はユダヤ教、父親はキリスト教であった)、家庭に楽器があったりなど、きっかけがあったのではと思われます。

14歳の頃からラップに興味を持ち、実際に取り組みますが、それまでは歌手になりたかったそう。


高校時代(15歳)には、ラップに生活のすべてを注ぐようになります。「15歳になったとき、ラップに本気で取り組むようになって、それが人生を完全に変えた。それまではどんなスポーツもやったし、高校のパーティーにだって行っていたけどね。でも一度ヒップホップが仕事になるって分かってからは、それだけに取り組むようになった。」


15歳の時(2007年)にミックステープ「But My Mackin' Aint Easy」をリリース。その後もミックステープをリリースし続け、2009年からは「マック・ミラー」として活動を開始。

21歳の時(2010年)にピッツバーグのヒップホップアウォード21歳以下の部で、彼のMV「Live Free」がベストヒップホップビデオに選出されます。


自身のリソースを音楽に全振りして以降、着実に楽曲制作を行い、礎を築いていたことがうかがえますね。

「K.I.D.S」のリリースとブレイク

▲ ミックステープ「K.I.D.S」

地元のインディーレーベルから「K.I.D.S」をリリース

特に地元で注目を集めていたマック・ミラーは2010年にRostrum Recordsという地元ピッツバーグのインディーレーベルと契約。他のレコード会社からも呼びかけられていましたが、地元にあるということ、そして同じピッツバーグ出身のラッパー「Wiz Khalifa」との関係性を重視してRostrum Recordsを選びました。

2010年に同レーベルから「K.I.D.S.」がリリース。リリースしてから2019年までにDatPiffというサイトでは110万ダウンロード、150万回されるほどのヒット作となりました。


収録曲がラジオなどの主流メディアでは取り上げられることは少なかったですが、SNSでの注目度や曲のデジタルダウンロード数、ツアーの成功などを見ると、この時期にマック・ミラーは「ブレイク」したといえます。


実際にこのミックステープを聞いてみると、無料でダウンロード可能であるにも関わらず、非常にクオリティが高いと感じます。ぜひ視聴してみてください。

【補足】ミックステープとは

ミックステープとは、ラッパーやDJが他ミュージシャンによる既存の曲をサンプリングしたり、リミックスを施して(楽曲制作者からの許可などをとることもなく)リリースするCDや楽曲、アルバムのこと。著作権の問題となることもありますが、誰かに曲を使ってもらうことでミュージシャンの再評価なども起きるため、ある程度黙認されています。

例えばマック・ミラーの「K.I.D.S」の場合、ほとんどの曲のトラックが既存の曲をサンプリングしたものとなっています。

ミックステープに使われている元ネタ曲を探し出すのも面白いですよ。

初のビルボードチャートイン曲「Donald Trump」

怒涛の勢いで楽曲制作に取り組むマック・ミラー。続く2011年リリースのミックステープ「Best Day Ever」にも収録されたシングル曲「Donal Trump」は、ビルボードホット100チャートの75位に昇り詰めるほど人気曲に。

マック・ミラーにとって初めてのチャートイン曲でした。


さらに同年にリリースした6曲組のEP「On and On and Beyond」はビルボード200アルバムチャートで65位に。これも彼にとって初の快挙でした。

初スタジオアルバム「Blue Slide Park」

▲ 1stアルバム「Blue Slide Park」

2011年はさらに10月に13曲組のミックステープ「I Love Life, Thank You」、11月に初のスタジオアルバム「Blue Slide Park」をリリース。このアルバムは初週で14万枚を売り上げ、ビルボード200のトップでチャートインしました。

インディーレーベル発のアルバムが初週でトップに躍り出たのは、1995年のThe Dogg PoundsというHipHopデュオ政策の「Dogg Food」以来のこと。このことからも、人気が爆発していることが分かりますよね。

しかし、商業的には大成功しましたが、音楽雑誌などからの評価は良い・悪い様々で、総評としては「とても優れている」という評価は得られませんでした。

大麻の所持で逮捕

この2011年2月に、ツアー中のマック・ミラーは、マリファナを所持していたことから友人と一緒に逮捕され刑務所で1晩を過ごしたそうです。

ブレイク後も精力的に楽曲をリリース

これまでの作品とは雰囲気の違う「Macadelic」

▲ ミックステープ「Macadelic」

2012年には7つ目のミックステープ「Macadelic」をリリース。このミックステープからのシングル「Loud」はビルボードホット100で最高53位に着けるヒット作となります。

この作品の制作において、「どんな音楽を作るべきか、ということを考えるのを止めて、言いたいことを言う」という気持ちで臨んだと本人んが語る通り、これまでの楽曲とは少し異なる雰囲気の曲が多いです。

具体的には「サイケデリック」系のサウンドが目立つ、と言われています。

様々なジャンルの音楽に取り組む

2012年の11月には、「Larry Lovestein & The Velvet Revival」という名義で6枚組のEPをリリース。この作品はごりごりのヒップホップではなく、しっとりとしたジャズっぽい曲が多いです。

彼の音楽への関心が幅広いことが分かりますね。

活動の幅がどんどん広がる

2013年にはレコードレーベル「REMember Music」を起こします。無くなってしまった友人「Reuben Mitrani」にちなんで名づけられました。

また、MTV2という有料テレビチャンネルによるドキュメンタリーコンテンツ「Mac Miller and the Most Dope Family」が2013年の2月に開始。

3月にはミックステープ「Run-On Sentences Vol.1」をリリースします。

アリアナ・グランデとの共作「The Way」

2013年の3月末には、歌手のアリアナ・グランデの1stアルバム「Yours Truly」からのリードシングル「The Way」がリリース。

マック・ミラーをフィーチャーしたこの曲は大ヒット。マック・ミラーにとっても最も売れた曲としてビルボードホット100で9位に着けました。

2ndアルバム「Watching Movies with the Sound Off」

2013年の6月に2ndスタジオアルバム「Watching Movies with the Sound Off」がリリース。これまでの音楽制作で培ったセンスが盛り込まれたサイケデリック寄りのアルバムは、前作と異なりセールスだけでなく、メディアからの批評においても高い評価を得ました。

さらに別のミックステープをリリースしたり、ツアーに出たりと大忙しです。

ドラッグの乱用が目立ち始める

ドラッグの乱用とうつ状態

▲ ミックステープ「Faces」

実は2012年のMacadelicツアー頃から、肉体的・精神的な負担とストレスを和らげるためにプロメタジンという咳止めシロップとして処方される薬を摂取しはじめるようになります。正確には、この咳止めシロップを炭酸ジュースと混ぜ合わせた「リーン」と呼ばれるパーティードリンク(悪いパーティーで飲まれる悪いパーティードリンクなので注意)を頻繁に摂取し、中毒になっていたそうです。

上述のドキュメンタリーを撮影するころには一度摂取を止めることが出来ましたが、2014年には再びリーンに依存。


Rostrum Recordsとの契約は2014年に切れることになっていたので、解約後、10枚目のミックステープ「Faces」を2014年5月にリリース。このアルバムは「内省的で、彼自身のドラッグ依存、名誉とこれまでの軌跡を振り返っている作品だ」と評価されていて、後に自身もこの作品のレコーディング中はドラッグまみれの生活を送っていたと語っています。

3rdアルバム「GO:OD AM」をリリース

▲ アルバム「GO:OD AM」

2014年には、自身のレーベル「REMember Music」の楽曲のレコーディングと流通サポートのため、メジャーレーベル「Warner Bros Records」と契約。

「GO:OD AM」はこのレコード会社と契約してから初めてリリースされたアルバム(2015年9月)で、きちんと商業的成功をおさめます。


このアルバムをリリースしてすぐ、今度は「愛の探求」をテーマに新作に取り組みます。

4thアルバム「The Divine Feminine」と恋愛関連の話

▲ アルバム「Divine Feminine」

前作から1年後の2016年9月にアルバム「The Divine Feminine」がリリースされます。前作と同様、セールス的にも批評的にも評価の高い作品となりました。

このアルバムはロマンティックな恋愛というよりも、彼が人生を通して女性から学んだこと、それが彼の人生に与えた影響などをインスピレーションに制作されたとのこと。


なおマック・ミラーは高校時代から付き合ったり、別れたり、復縁したりを繰り返していた彼女と2016年につきに別れていたそう。そして、このアルバムリリース前後ごろからアリアナ・グランデとの関係がうわさされます。

なお、このアルバム収録の「My Favorite Part」はアリアナ・グランデがシンガーとして参加しています。

最後のアルバムとオーバードースによる終焉

▲ アルバム「Swimming」

ドラッグとはつかず離れず

2016年2月のドキュメンタリーでは「素面でいるのがイヤだ」と語っていたマック・ミラーですが、2016年10月までに3カ月間ドラッグを断つことに成功。気分の落ち込みもなく、楽曲制作の創造性も失っていないと調子が良かったようです。

Swimmingのリリースと異変

2018年の8月には5枚目にして最後のアルバム「Swimming」をリリース。このアルバムもまた、セールス・批評の両面で高い評価を得ます。

しかしこのアルバムリリースの前後で様々な出来事が起こっていました。


まずは2016年に交際が噂されたアリアナ・グランデとの破局。2018年5月ごろだったと噂されています。この後すぐ5月内にアリアナ・グランデはコメディアンのピート・デイビッドソンとの交際を公に宣言。6月には婚約したことを公表(ただしこの10月に婚約は破棄されてしまいます)。


どれが先に起きて、後に起きたのか詳しくは分かりませんが、5月にマック・ミラーは酔った状態で友人2人と車を運転し、電柱に激突。そのまま現場を去りますが、現場に到着した警察が車のナンバープレートを発見。

自宅に警察が訪れた際、素直に白状したマック・ミラーは拘留され、保釈金を支払います。

オーバードースによる死

この2018年9月、自宅にいるはずのマック・ミラーと連絡がつかないことから、友人(もしくは友人兼個人的なマネージャー?)が通報。

マック・ミラーは遺体で見つかり、オーバードースが死因では?という推測のもと調査が開始。11月には、フェンタニル、アルコール、コカインを一度に多量に服用した、突発的なオーバードース事故が死因だと特定されました。

亡くなる数時間前(と推測されている)には、自身のインスタグラムストーリーズで、自身の楽曲をかけたりする様子が投稿されるなど、落ち着いた雰囲気だったとのことです。

マック・ミラーの代表曲

マック・ミラーの楽曲の中でも特に有名なものを2つ紹介します。

The Way

正確にはマック・ミラーの曲ではなく、元恋人であるアリアナ・グランデの楽曲にマック・ミラーが参加した曲です。とはいえ、その名が刻まれた曲としては最も広く知られているので紹介します。

なお、この曲がリリースされたのは2013年。アリアナとの関係が噂され確認されたのは2016年から2018にかけてのことです。2016年までは、高校で知り合った方とお付き合いをしていたそう。


ちなみに、この曲の印象的なピアノフレーズの元ネタはBrenda Russelというミュージシャンの曲「A Little Bit of Love」です。

Self Care

アルバム「Swimming」に収録されているこの曲。

リリース直後、タイトル(Self Careは単純に訳すると自分をケアするとなります)からも分かる通り、アリアナとの破局や麻薬中毒など、「マック自身が抱える問題やそれらに向き合う姿勢について歌われたものでは?」と話題になりました。

ミックステープもオススメ曲が満載

ミックステープは無料で公開されており、ダウンロードも可能です。いろいろなサイトで視聴可能だとは思いますが、DatPiffというサイトがミックステープの共有においては一番有名です。

興味のある方はまずミックステープを視聴してみるとよいでしょう。どれもクオリティは高いですが、とりあえず「K.I.D.S」から聞いておけば間違いないはずです。

【総括】マック・ミラーの音楽キャリアと薬物依存

26歳の若さで薬物により命を落とすまで、ハイペースで楽曲制作とツアーに明け暮れたマック・ミラー。人気と多忙によるストレスとプレッシャーに耐えながら、5枚ものスタジオアルバムをリリースしており、クオリティも高い。

必ず聞いておくべきミュージシャンであるといえるでしょう。

この記事は、クリエイティブ・コモンズ・表示・継承ライセンス3.0のもとで公表されたウィキペディアの項目Mac Millerの一部を素材として二次利用しています。
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