【ギタリスト田中裕一が解説!】知らないと損するギターの構え方&左手の押弦

ギターの持ち方・弦の抑え方の基礎知識をギタリストの田中裕一氏が解説。音楽ジャンル不問、初心者から上級者まで役立ちます。

記事の執筆者:田中裕一さん

ギタリスト・コンポーザーである田中裕一さん。YouTubeチャンネルや公式サイト、音源などから分かる通り現在活動の中心ジャンルはジャズだが、他ジャンルにも造詣が深い。

自身が運営するブログでは出演情報だけでなく、ジャズのコードにまつわる知識、機材レビューなども発信。

東京の飯田橋・神楽坂・江戸川橋エリアでギターレッスンも行っている。

1.はじめに

こんにちはギタリストの田中裕一です。

今回は全ギタリスト必見!知らないと損するギターの構え方&左手(押弦)編。について書いてみたいと思います。

1-1.構える&左手の押弦はセット

ギターを弾くには「構える」→「押弦する(左手)」→「弦をはじく(右手)」の3行程が必要なわけですが、実は「構える」&「押弦する(左手)」はセット。

「構える」ができていないと、力のロスなく適切に「押弦する(左手)」ことは難しいんです。

ですから、上手く弦を押さえられないとお悩みの初心者の方はもちろん。より良い(究極の!?)押弦を目指される中~上級者以上の方も下記の内容、知っておいて損はない、、、いえいえ「必見!」であります。

1-2. ジャンル、使用楽器によらず演奏のレベルアップ間違いなし!

押弦がきちんと出来ていなければ、「弦をはじく(右手)」の行程に進んでもきれいな音は鳴りませんし、押弦の際の力のロスを抑えることが出来ればその他のこと(ピッキング、コード、スケールetc…)に気を配る余裕も出てきて、本記事をお読みのアナタの演奏は格段にレベルアップすること間違いなしです!

これは音楽ジャンルを問いませんし、アコギでもエレキでも使用楽器も問いません。

※以下、右利きの場合を想定して書いていきますが、左利きの方は左右を逆にして考えてみてください。

2. ギターの構え方(ボディ固定編)

2-1. 「左ひじの角度が90度以内になる高さ」にギターを構える

まずはギターの構え方についてです。

座って弾く場合を想定した方がわかりやすので、椅子に座っているところをイメージしながら読んでみてください。


椅子に座ってギターを弾こうとしたとき多くの方は足を組むないし、足台を使ってギターの位置を高くする、顔に近くするように構えると思います。

これは日常の動作を考えてもそうですが、細かい作業をするときに手を体からわざわざ離すことはありませんよね。それに、ひじの角度が90度を超えると指先を動かしたときに少し腕の腱が突っ張る感じがしませんか?(やってみてください。)


つまり「左ひじの角度が90度以内になる高さ」にギターを構えないと細かい作業(ギター演奏)はやりにくいですし、そのうえ体に負担もかかるので良いことはありません。※また、以降に登場しますが、ひじよりも手首が高い位置に構えられていないと腕の重さをネックに(弦に)掛けることが出来ません。


これはもちろん、ストラップを掛けて立奏しようとする際にも同じことが言えるでしょう。

また、座奏の場合は右ひじの角度は90度を超えませんし、立奏の場合も「左ひじの角度が90度以内になる高さ」にギターを構えていれば自然と右ひじの角度は90度以内に収まると思います。


それでも上手くいかない場合は指板を覗き込む動作などでヘッドが下がっていないか、ネックの角度などを確認してみましょう。

2-2. 3点固定

さて、いまアナタは椅子に座ってギターを弾こうとしています。ここでいきなり左手で弦を押さえて、右手で弦をかき鳴らそうとしてはいけません。

太もも、右のあばら骨あたりにギターが接触していると思いますが、もう一点右ひじに着目してこの3点できっちり楽器を固定しましょう。固定されていないグラグラしたものに力を上手く(ロスなく)伝えることはできません。


立奏の場合はストラップのかかる左肩と、右のあばら骨あたり、右ひじの3点で楽器をきっちり固定しましょう。


また、座奏の場合もストラップを掛けて4点固定になるストラップの長さ(立っても座ってもギターの高さが変わらない)に調整するとなお良いでしょう。


そして、この右ひじは「やじろべえ」の片側、右のあばら骨あたりは「やじろべえ」の中心・軸部分となります。後の解説でも登場しますので、ぜひ覚えていてください。

3. ギターの構え方(左手編)

3-1. できるだけ大きな筋肉を使って動作をコントロールしよう

楽器をきちんと固定出来たところでついに左手で押弦です。

押弦については「握力があまりなくて、、、」と言ったお悩みをよく耳にしますが、これはむしろ逆でして、ギターを弾くのに握力を使ったら上手く弾けません。できるだけ握力、もとい筋肉(筋力)を使わずに済む方法を考えるべきなのです。

小さい筋肉より、できるだけ大きな筋肉を使って動作をコントロールしようと言うのは他楽器でも、あるいは各種スポーツでも動作を安定させる基本ですよね。それに力んでいては素早く正確な動きはできません。


左手は「手の形を作って」→「弦の上に乗せて」→「後ろに引っ張る」と言う方法で押弦します。握力はひじと手首の間の前腕の筋肉を主に用いますが、「後ろに引っ張る」動作は上腕、背筋、胸筋など明らかに前腕より多くの(大きな)筋肉を用います。


また、ギター演奏において意識的に「筋肉」を使うとしたら、それは左の手のひらの筋肉です。手の形を作って、それを弦に押しあてる訳ですが、その際に左手の形がぶれないように手のひらの筋肉(とくに小指側面の小さい筋肉)を意識して、手の形を安定させるように意識しましょう。

3-2. 「ミョーン」の力加減と、押弦について適切な力加減

【1】
次に、押弦についてはどのくらいの力が弦に対して掛かれば良いのかですが、例えば左手の人差し指を一本出していただいて適当な弦&フレット(例えば2弦の3フレット)を押さえて弦を弾いてみてください。レの音が出ると思います(笑)

ここから力を少しずつ緩めていくと「ミョーン」のような音が出る(上手く押さえられていなくて、押弦部分のフレットと弦があたっていわゆるビビり音が出ている状態)力加減を見つけることが出来ます。

かなり繊細な力加減ですので、注意深くそのポイントを探りましょう。この「ミョーン」が重要!


【2】
「ミョーン」よりあと少し力を緩めると弦の振動は止まります。音をきれいに聴かせるには鳴らした音をひとつずつきれいに止めていくことも重要ですので、覚えておいてください。


【3】
そして<「ミョーン」よりあと少し強い力>が弦を押さえる際に適切な力加減です。

文言として「弦をしっかり押さえる」と言ったものがあるかと思いますが、これがしっかり正しい力加減です。やってみるとわかるかと思いますが、とても弱い力です。ババロアにぎりぎりあとがつかないくらいの力加減。また、ギターの弦は全部で6本ですから、ギター演奏に使う押弦の力はこのとても弱い力の6倍です。

実際にやってみてイメージしていただけるとわかるかと思いますが、押弦にはほとんど力が必要ないことがわかります。普段ギターを弾いてみて押さえるのに力が必要で疲れる(大変)とお悩みの方は、必要以上の力を使っているか、力をロスしすぎているか、(弦高が高すぎるetc…)楽器の調整が上手くいっていないかのどれかです。


【4】
弦を強く押さえすぎてしまうと、弦がフレットとフレットの間にめり込んで音程が狂ってしまいます。軽くチョーキングしたような感じ。このことからも適切な力加減での押弦が大切なことがわかります。

※例えば6弦の2~3フレットあたりを強く押さえるなどして確認してみてください。

3-3. 左肩の脱力(腕の重さを使う)と、やじろべえ

さて、適切な力加減がわかったところで、最後はその効率の良い生み出し方です。
<本記事の最重要ポイントであり、まとめ。>

押弦に必要な力はババロアにぎりぎりあとがつかないくらいの力加減の6倍程度ですから、握力はもちろん、上腕、背筋、胸筋などをフル稼働させる必要など当然ありません。

左腕の重さを用います!


【1】
左肩を脱力して、手のひらの筋肉で固定した左手の形を、左腕の重さを使ってネックにぶら下げて、弦に押し当ててやる。


【2】
するとネックは後方へ動こうとして、右のあばら骨あたりが中心・軸部分となって「やじろべえ」のような状態になりますから、右腕も脱力してボディに預けてしまうことでこの「やじろべえ」の回転を釣り合わせましょう。これで弦はフレットにきちんと押し当てられます。


【3】
そして押弦に余分な腕の重さを、上腕、背筋、胸筋で支えてやるという感じです。これはギターに重さを預けているぶん、むしろ普段よりも楽な状態と言えるかもしれません。


【4】
また、ギターを体に対して斜めに構えるほど右のあばら骨あたりの中心・軸部分は右腕側に移動します。また左手は中心からの距離が遠くなりますので、より少ない力での押弦が可能となります(てこの原理)。

逆に右腕は中心からの距離が短くなりますので少し意識的に力を掛けてやると良いでしょう(同じく、てこの原理)。


【5】
加えて、左手の指は真横ではなくて斜めに開いてやるのが大切なのですが(手のひらを自分の顔に向けて人差し指を奥に、小指を手前に倒してやる)このときの人差し指と小指を結ぶ線の角度は腕に対しておよそ45度ほどが理想かと思います。

すなわち「④ギターを体に対して斜めに構える」の角度は「体に対して45度ほど」が理想かと思います。思ったよりもずっと斜めに構えることになるかと思います。

※動画などでギターがカメラ正面に向いている人を良く観察してみると、体がカメラに対して斜めになっているのがわかるかと思います。

【6】
左腕の重さを常にネックにかけ続けたまま演奏することが出来ればあとは指をパタパタと軽く動かすだけ。それはおよそデスクトップパソコンのキーボード入力程度の力です。

つまりギター演奏にはほとんど力を使う必要がないことがわかります。

ただ、先にも述べましたが「左手の形がぶれないように手のひらの筋肉(とくに小指側面の小さい筋肉)を意識して、手の形を安定させるように意識しましょう。」については重要ですから覚えておいて下さい。

4. さいごに(再まとめ)

最後までお読みいただきありがとうございました。

読んでみて少し難しく感じられた方もいらっしゃるかと思いますが、実際にやってみると<右のあばら骨あたりを中心・軸部分にして、左腕と右腕の重さを釣り合わせる「やじろべえ」ないし、てこの原理を用いましょう!>力を上手に無駄なく弦に伝えましょう!(するととても楽に弾けます。)

と言う、小学校の理科の授業程度の簡単な内容ですので、ぜひ実際にやってみて皆さまのギターライフにお役立ていただけたら幸いです。

左腕の重さを使って弦に押し当てた左手の形がぶれないように手のひらの筋肉(とくに小指側面の小さい筋肉)を意識して、手の形を安定させることも重要ですので、これもぜひ忘れずにいてくださいね!

音マグ編集部より一言

現役プロミュージシャンである田中さんは実はギターレッスンも行っています。そのためか、本記事の構え方・押弦のコツもかなり分かりやすかったですね!

ギターは意外と持っていると疲れてしまうので、本記事を参考に正しい構えを身に着けてください!

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